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【時代・筆者に関して】
○書風から室町時代中期頃とみられる。
○本断簡は『源氏物語断簡集成』(汲古書院 2000年刊)の第三部「源氏物語注釈・系図・和歌等」に図版が掲載されている(p.204)。しかし、第三部に掲載されている古筆切は図版のみで、解説は加えられておらず、時代・筆者については判然でない。
○「後花園院」とした極め札(鑑定票)がある。また本紙の裏面(裏打ち紙)に「後花園院」「徹書記」と墨書して消してあり、あらためて「後花園院」と墨書している。後花園院と徹書記(正徹)の真筆は広く知られている。本断簡と筆跡比較を行なうと、どちらもよく似通っているが、同筆ではない。本断簡の書跡は、非常に癖のつよく、著しい特徴があり、後花園院、正徹らと同時代の文人の書跡によく似通う書風であるが、手許の書籍等に同筆資料は見いだせなかった。以上のことから本断簡の筆者は15世紀前半(室町時代中期)に活躍した文人とみてよいと考えられる。
本断簡が掲載されている書籍について、また書跡の比較検討については《参照画像》を参看されたい。
《参照画像1》『源氏物語断簡集成』(汲古書院 2000年刊)と本断簡の画像
《参照画像2》「後花園院宸翰詠草(大覚寺蔵;冒頭部分)」(左;『宸翰 天皇の書』京都国立博物館 2012年刊)と本断簡(右)
《参照画像3》正徹和歌短冊2葉(左;『日本書蹟大鑑7』講談社1979年)と本断簡(右)
【内容について】
○本断簡の極め札(鑑定票)に「空蝉 注」とある。本断簡の書写内容をみると、たしかに源氏物語に描写されている空蝉の境遇が時系列に沿って記述されている。このことから、本断簡は源氏物語の注釈本の一部であり、特に登場人物である空蝉について略述したものであるとみられる。
※先述の通り、本断簡は『源氏物語断簡集成』(汲古書院 2000年刊)に図版が掲載されているが、解説・釈文などは記述されていない。
○本断簡の書写内容は次の通り。
「(・・・)は、我思なもなくて、いよのすけがつまなどになるべきにあらねども、おやなどもなくて、みやづかへ人もなければ、かつていたるといま心ねをよみしなり。さるほどにとかくして、ほのかにあひ給ふ。そののち、とかくいひ給へむ。又もあひたまはず。げんじ、御こころづくしにおぼしめして、すゑの世までわすれたまはず。いよのすけうせてのち、あまになりしをむかへ給ひて、二でうのゐんのひがしのたいにすませ給ふ。いよのすけがいゑは中がはのわたりなり。いまのきやうごくがはなり。さるほどにたまかづらを(・・・)」
【材質など】
○紙本墨書(しほん・ぼくしょ)・肉筆。元は冊子体だったと考えられ、本断簡はその一頁分に当たるとみられる。朱点が2ヶ所ほどみえるが当初からのものか不明。本紙中央辺りの紙が乱れており、墨書を消して訂正したとみられる痕跡がうかがえる。
○裏打ち紙が施されている。裏打ち紙には「後花園院」「徹書記」と墨書して消した痕がある。さらに「後花園院」と墨書してある。
○極め札(鑑定票)は「後花園院」と墨書してあり、別筆で「空蝉 注」と小書きしてある。押印がみえないことから、古筆家(こひつけ;中世後期〜近世にかけて公的に書画の鑑定を行なった家)による極め札ではないと考えられる。
【寸法】タテ 約23.0cm×ヨコ 約16.0㎝
※その他注記など・・・
・筆者名は基本的には署名・伝承筆者によっています。自筆・真筆であるか否かについては説明文中でふれています。
・詳細は画像資料その他を御覧ください。また、釈文等は省略・誤読もあろうかと思いますので御参考程度にお考えください。どうぞよろしくお願いします。
・出品取り消しについて・・・基本的には御入札のない場合に限りますが、画像・解説の改訂を行なう際や、他所にての販売機会との兼ね合いで、出品取り消しを行なうこともあります。たいへん失敬ながらどうか御諒承ください。
・お値段については、以前に御意見・御質問をいただいたのですが、必ずしも相場を反映していないかもしれません。主に入手経緯・架蔵分などの諸事情や、個人的な関心・評価に基づくものだからです。今後とも御意見・リクエストなどお待ちしております。